睡眠時無呼吸とデジタルコネクテッドヘルス

今、コネクテッドヘルスの有用性を示す研究結果が次々と報告されています。ここでは、コネクテッドヘルスがコンプライアンスの改善、効率の向上、質の高いケアにつながることを明らかにした最新の研究をご紹介します。

Patient engagement using new technology to improve adherence to positive airway pressure therapy(新しいテクノロジーを使用した患者エンゲージメントによる自動気道陽圧療法のアドヒアランス向上)

Malhotra A, et al. CHEST 2017.

研究の概要:睡眠時無呼吸を抱える患者さん128,000例以上を対象とした観察研究。各患者さんが使用した治療装置は、myAirTM(ウェブまたはiPhone®で利用できるレスメドの認知行動ベースの患者支援アプリ)により担当医や患者さん自身が治療を遠隔モニタリングできる機能を備えていました。

知見:American College of Chest Physicians(米国胸部医学会)の2016 CHEST総会における研究発表で、レスメドは、気道陽圧(PAP)法による睡眠時無呼吸治療時にオンラインのセルフモニタリングツールを使用していた患者さんの方が、治療を継続する割合が有意に高いことを示すデータを報告しました。

  • myAir™を使用し、かつ、AirView™を介したモニタリングを受けていた患者さんの87%以上が、90日以上にわたって治療を継続1
  • myAirは使用していないもののAirViewによるモニタリングを受けていた患者さんでもコンプライアンス率は70%。ベースラインとしたのはモニタリングなしの場合のCPAP療法に対するコンプライアンス率で、こちらは文献から50%と推定した1,2

myAir、AirView、モニタリングなしの比較
「この新しい研究は、オンラインのセルフモニタリングツールが患者さんの治療参加を促し、治療に関するコンプライアンスとアドヒアランスを大幅に改善することを示しています。この研究ではPAPユーザーに注目しましたが、私たちは治療に関するコンプライアンス全般を改善するうえでオンラインツールが果たす役割という観点から、今回の結果をもっと広く一般化できるのではないかと考えています。」

Adam Benjafield、PhD – レスメド、メディカルアフェアーズ担当バイスプレジデント

Empowering the sleep apnea patient(睡眠時無呼吸患者の支援)

PwC, 2016.

研究の概要:睡眠時無呼吸を抱え、CPAP療法または自動気道陽圧(APAP)療法を受けていたドイツ、イギリス、アイルランドの患者さん23,000例超から、日々の使用量データを3ヶ月分収集し、匿名化のうえ解析2。患者さんはいずれも睡眠専門クリニックや在宅医療提供者による治療を受けたうえで、全員に看護師または医師による遠隔モニタリングが行なわれていました。また、患者さんのうち1,800例以上は、レスメドのmyAir™デジタルセルフモニタリングプログラムにも登録していました。

知見:オンラインセルフモニタリングツールを使用した患者さんの方が毎晩の装置使用時間が長いことがわかりました。

  • myAir™を使用した患者さんは、他の患者さんよりも装置の使用時間が一晩あたり平均46分長い2
  • 新規患者さんの場合、CPAP療法開始後1週間の平均アドヒアランスは、myAir™群では76%、その他の患者群では71%3

「近年は遠隔モニタリングの導入により、睡眠専門クリニックや在宅ケア提供者が、新たにCPAP療法を受ける患者さんを当初から積極的に支援できるようになっています。その遠隔モニタリングを次のステージへと押し上げたと考えられるのが、myAir™です。今回の研究で、myAir™を使用した患者さんのアドヒアランスと使用時間が、他の患者さんよりもはるかに良好であることが明らかになったからです」

Christian Käfling氏、PwC

レスメドのMyAirによる46分

A telehealth program for CPAP adherence reduces labour and yields similar adherence and efficacy when compared to standard care(CPAP療法のアドヒアランス向上を目指す遠隔医療プログラム:負担の軽減に加え、標準医療と同等のアドヒアランスおよび有効性を確認)

Munafo D, et al. Sleep Breath 2016.

研究の概要:新たにOSAと診断された患者さんを対象として、標準医療との比較により、ウェブベースの自動遠隔医療メッセージングプログラムの有効性と指導負担の必要性を評価しました。

知見:遠隔医療プログラムは、アドヒアランスを保ったままで指導の必要性を減らすことができます。

  • 患者さん1人あたりに必要な指導の時間が、標準医療群では58.3分であったのに対し、遠隔医療群では23.9分と有意に短い。さらに遠隔医療群の患者さんの大半から、遠隔医療プログラムが期待どおりないし期待以上であったとの感想も得られている。

Telemedicine-based proactive patient management during positive airway pressure therapy(気道陽圧療法施行中における遠隔医療を使った事前的患者管理)

Holger Woehrle, et al. Somnologie, January 2017.
結果はドイツの在宅医療関連事業者ResMed Germany Healthcareのデータに基づく

研究の概要:ドイツの大規模な在宅医療関連事業者のデータを基に、PAP療法のデータに遠隔アクセスできる患者管理プログラムを使った事前介入が治療脱落に及ぼす影響を、標準医療との比較で検討しました。事前介入の判断には、AirView™で取得したデータを使用しています。対象は初めてPAP療法を受ける患者さんで、3,401例ずつ、2群に割り付けて分析を実施しました。

知見:遠隔医療を使用して事前介入を実施した患者さんのグループの方が、標準的なPAP療法を実施したグループよりも長期の治療脱落率が低いことがわかりました。

  • 初年度のPAP療法においては、事前介入実施群の方が標準医療群よりも全体の治療脱落率が有意に低い(5.4% vs 11.0%、p < 0.001)。また、治療脱落までの期間についても、事前介入実施群の方が有意に長い(348±58日 vs 337±76日、p < 0.05)。
  • コックス比例ハザード分析では、事前介入実施群の方が標準医療群よりもPAP療法からの脱落のリスクが有意に低い(ハザード比0.48、95%信頼区間0.4–0.57)ことが明らかになった。
  • 性別、装置の種類、保険の種類により層別化したサブ解析、ならびに40歳以上の年齢を対象としたサブ解析においても結果は同じであったが、40歳未満の患者群では、PAP療法からの脱落のリスクが事前的介入実施群、標準医療群とも同程度であった。

Retrospective descriptive study of CPAP adherence associated with use of the ResMed myAir application(myAirアプリケーション使用症例のCPAP療法アドヒアランスに関する後ろ向き記述的研究)

S Lynch, et al. ResMed Science Center, ResMed Ltd, Sydney, Australia, 2015.

研究の概要:匿名化された患者記録2,343件から収集したmyAir™使用データを使用してレスメドが実施した後ろ向き記述的研究。

知見:レスメドのデジタルセルフモニタリングプログラムmyAir™が、CPAP療法のアドヒアランス向上に寄与することがわかりました。

  • 標準医療にmyAir™アプリケーションを併用した新規CPAPユーザーの83.9%が、治療開始から90日間にわたりメディケア基準のアドヒアランスを達成。
  • 同じく印象的な結果を挙げると、ユーザーの75.4%が30日間のアドヒアランスを達成、メディケア基準のアドヒアランス達成までの期間の中央値は23日。

関連文献

  • Wozniak DR, et al. Educational, supportive and behavioural interventions to improve usage of continuous positive airway pressure machines in adults with obstructive sleep apnoea. Cochrane Publication, 2014.
  • Konikkara J, et al. Early recognition of obstructive sleep apnea in patients hospitalized with COPD exacerbation is associated with reduced readmission. Hospital Practice, 2016. 
  • Kuna ST, et al. Web-Based Access to Positive Airway Pressure Usage with or without an Initial Financial Incentive Improves Treatment Use in Patients with Obstructive Sleep Apnea. Sleep, 2015.

参考資料:

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* 中枢型優位の睡眠時無呼吸を伴ない安定状態にある左室収縮機能低下 [左室駆出率≦45%]に 基づく心不全患者へのASVの導入・継続は禁忌ではないが、慎重を期する必要がある。

  • Crocker M et al. Patient Engagement Using New Technology to Improve Adherence to Positive Airway Pressure Therapy. Chest, 2016.