エビデンスに基づく、COPDに対する在宅NIVのメリット
HOT-HMV研究
HOT-HMV研究1では、在宅での非侵襲的換気と酸素療法により、高炭酸ガス血症を呈したCOPD患者さんの再入院または死亡のリスクが51%低下することが示されました。
HOT-HMVの主要な知見
再入院または死亡のリスクが51%低下
12か月に1回の再入院または死亡事例の発生を回避するために、6人の患者さんを治療することが必要
最初の28日で再入院のリスクが74%低下
増悪率は34%減少
高圧での換気は効果的にCO2濃度を下げ、治療への耐用性は高かった*
HOT-HMV療法の費用対効果
HOT-HMV研究の結果1を踏まえて、生命にかかわる増悪後に持続性の高炭酸ガス血症を呈した英国のCOPD患者さんについての医療経済分析が行われ、HOT単独との比較でHOT-HMVの費用効果が評価されました2。
Köhnleinの研究
1年間のNIV治療により、 死亡リスクが76%低下 3
このランダム化対照試験では、安定期高炭酸ガス血症のCOPD患者さんがNIVによる効果的な治療を受けた場合に、生存率の有意な改善が見られました。
生活の質の向上3
この研究は、呼吸に関する質問票であるSt George’s Respiratory Questionnaireを使用して、NIV治療を受けた患者さんの生活の質が有意に改善したことも明らかにしています。
対象者とタイミング:在宅NIVを受ける患者さんの選別
COPDの増悪に関連した急性呼吸不全から回復中の患者さんについて、呼吸性アシドーシスの解消後2~4週間の時点で評価を行い、そこで持続性高炭酸ガス血症が認められた患者さんに在宅NIVを施行します1。
慢性の高炭酸ガス血症性呼吸不全が見られる安定期COPDの患者さんも、在宅NIVのメリットを享受できます3。
在宅NIVを開始するタイミングの違いによって、研究間での結果の違いを説明できる可能性もあります1,4。
臨床試験データに基づく在宅NIV患者さんの選別過程を示すフローチャート1,3
GOLDガイドライン
Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease(GOLD:慢性閉塞性肺疾患に関するグローバルイニシアチブ)ガイドラインによると、在宅NIVは、最近入院していて特定の条件により選別された患者さんの無入院生存率を改善する可能性があり、とりわけ日中の持続性高炭酸ガス血症が著明な患者さんではその見込みが高くなります(PaCO2≧52 mmHg、エビデンスレベル=B)5。
ERSガイドライン
複数領域の専門家から成るERS Task Force委員会は、エビデンスに基づく推奨ガイドラインを発表しました。これは、持続性の高炭酸ガス血症性呼吸不全を呈したCOPD患者さんについて、固定の圧力設定を使用し、二酸化炭素濃度の低下を目標とすることにより、長期間の在宅NIVの適用を条件付きで支持するものです6。
在宅NIVによるCOPD患者さんの治療法:ベストプラクティス
二酸化炭素濃度の上昇を改善することを、在宅NIVの主要目標に据えるようにします7。
臨床試験データは、上昇した二酸化炭素濃度の低下を目標とした高い吸気圧の使用が在宅NIVの成功に貢献することを示しています1,3。
高強度のNIVがアドヒアランス、睡眠の質、生活の質に負の影響を及ぼすというデータは得られていません8。
参考資料:
*3か月および6か月時点の生活の質とコンプライアンスに関する結果に基づく
Murphy P et al. Effect of Home Noninvasive Ventilation With Oxygen Therapy vs Oxygen Therapy Alone on Hospital Readmission or Death After an Acute COPD Exacerbation. A Randomized Clinical Trial, JAMA. Published online May 21, 2017. doi:10.1001/jama.2017.4451.
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Murphy P et al. Effect of Home Noninvasive Ventilation With Oxygen Therapy vs Oxygen Therapy Alone on Hospital Readmission or Death After an Acute COPD Exacerbation. A Randomized Clinical Trial, JAMA. Published online May 21, 2017. doi:10.1001/jama.2017.4451.
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Murphy PB et al. Cost-Effectiveness of Home Oxygen Therapy-Home Mechanical Ventilation (HOT-HMV) for the Treatment of Chronic Obstructive Pulmonary Disease (COPD) with Chronic Hypercapnic Respiratory Failure Following an Acute Exacerbation of COPD in the United Kingdom (UK). American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine 2018;197:A2517.
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Köhnlein T, et al., Non-invasive positive pressure ventilation for the treatment of severe stable chronic obstructive pulmonary disease: a prospective, multicentre, randomised, controlled clinical trial. Lancet Respir Med 2014;2:698-705.
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Struik FM, et al. Nocturnal non-invasive ventilation in COPD patients with prolonged hypercapnia after ventilatory support for acute respiratory failure: a randomised, controlled, parallel-group study. Thorax 2014;69:826-34.
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Vogelmeier DF, et al. Global strategy for diagnosis, management, and prevention of COPD. Am J Respir Crit Care Med 2017;195:557-82.
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Ergan B, Oczkowski S, Rochwerg B, et al. European Respiratory Society Guideline on Long-term Home Non-Invasive Ventilation for Management of Chronic Obstructive Pulmonary Disease. Eur Respir J 2019; in press (https://doi.org/10.1183/13993003.01003-2019).
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Nocturnal non-invasive positive pressure ventilation for COPD. Windisch W et al. Expert Rev Respir Med. 2015 Jun; 9(3):295-308.
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Dreher M, et al. Noninvasive ventilation in COPD: impact of inspiratory pressure levels on sleep quality. Chest 2011;140:939-45.