呼吸器の疾患
呼吸器に疾患や異常があると、肺をはじめとする呼吸器系に影響が及びます。このような疾患や異常は一般に、肺疾患や肺障害とも呼ばれます。ここでは、呼吸器によくみられる疾患とその原因や治療法についてご説明します。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、慢性気管支炎や肺気腫などの一連の進行性肺疾患を指す総称です。
COPDは、肺の気管支(気管支または気道と呼ばれることもあります)の狭小化、または肺の気嚢の損傷を引き起こします。
呼吸器疾患の種類
呼吸器疾患には4 つの種類があります: 肥満低換気症候群 (OHS)、神経筋疾患 (NMD)、拘束性肺疾患、および小児呼吸器疾患です。
- OHS
- NMD
- 拘束性肺疾患
- 小児の呼吸器疾患
肥満低換気症候群(OHS) は肥満の方に見られる呼吸障害です。 低換気症候群は、呼吸が浅すぎる、または遅すぎる状態を意味します。
体が呼吸をするのに必死になるため、呼吸器系が疲弊し、血液中の二酸化炭素濃度が高くなり、酸素濃度が少なくなってしまうのです。動脈血ガス分析により容易に診断することができます。
OHSの患者さんには、息切れ、日中の過度の眠気(EDS)、起床時の頭痛、抑うつの症状が現れることがあります。また閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)に罹患していることもよくあります。
治療をしないと
OHSを治療せずに放置した場合に、次のような結果を生じる可能性があります。
- 心臓の右部分の心不全1
- 肺高血圧症(肺動脈において血圧が通常より高くなる疾患)1
- 多血症(循環赤血球の数が異常に多くなる疾患。真性赤血球増加症とも呼ばれます)1
OHSは重大な健康被害をもたらす可能性があるため、早期診断と治療が必要な病気です。 すでにOSAの治療を受けているにもかかわらず、昼間の眠気や頭痛が持続する場合は、医師に相談してください。
治療法
OHSは、減量プログラムに取り組みながら1、気道陽圧法または非侵襲的換気(NIV)を受けることで、効果的に治療することができます2。
以下の検査により、担当医が患者さまの状態をモニタリング管理することもあります。
- 動脈血ガス分析*
* この検査は、動脈血の酸性度、酸素量、二酸化炭素量を測定し、肺が血液中に酸素を取り込み、二酸化炭素を排出する機能の状態を明らかにします。 - 肺機能検査
- 終夜睡眠ポリグラフィー(PSG検査)
- 胸部X線
OHSの患者さんに対して換気療法を実施する目的は、肺内の酸素と二酸化炭素の交換を促進すること3と、患者さんの呼吸が楽になるように呼吸器系を補助することにあります4。
換気療法では、ベッド脇に置かれた小型の装置から、患者さんの口や鼻を覆うマスクに加圧した空気を送ります。
神経筋疾患(NMD)は、筋肉を制御する神経をおかす幅広い疾患や病態、あるいは筋力低下そのものを指す名称です。神経が筋肉に指示を送れなくなると、筋肉は適切に機能できなくなります。
NMD患者さんの一般的な呼吸不全の症状として下記があげられます。
- 嚥下(えんげ)や呼吸が困難になる
- 疲労、脱力、眠気を感じる
- 起床時に頭痛がする
- 集中力が低下する
- 気分が変動する
- CO2値が高くなる
患者さんによっては、常時以下の症状がみられることもあります。
- 呼吸筋(呼吸に関与する筋肉)が弱くなる
- 補助換気が必要になる
- 車いすが必要になる
治療をしないと
NMDは筋肉に影響を及ぼすので、患者さんは自力で呼吸ができなくなるおそれがあります。当然のことながら、日中にしっかりと呼吸ができなくなれば、さまざまな活動を楽しむ気力や体力がなくなります。また、夜間に適切な呼吸ができなければ、身体機能が十分に働かないので、次の日までに体力が回復しません。
人工呼吸器の使用が適切であると医師が判断した場合は、そうした機器による治療を開始することが重要です。NMDにより引き起こされる呼吸と睡眠の問題を治療すると、患者さんの生活の質が大きく向上する可能性があります。人工呼吸器での補助によって呼吸の質が向上し、健康的な毎日を送れるようになるかもしれません。
治療法
非侵襲的換気( NIV )は、神経筋疾患患者の日中の動脈血ガスと呼吸不全 に伴う症状を改善することが示されています。 筋萎縮性側索硬化症患者では、 NIV は QOL と睡眠関連症状を改善するとさ れています。
- 重度の躯幹機能障害がない患者では、 1 回の NIV で生存期間が 7 ヵ月延 長する
- デュシェンヌ型筋ジストロフィー( DMD )患者、 1970 ~ 1990 年生ま れの連続 100 例のレトロスペクティブレビューで、 NIV は生存率を改善し た。脊椎手術では強制換気量は増加しなかったが、夜間換気と併用すること で生存期間中央値はさらに改善した 5。
- NIV は入院日数の有意な短縮と関連している 6 。
胸壁は呼吸のメカニズムに不可欠な役割を担っています。胸壁には、骨格(肋骨、脊椎、胸骨)と呼吸筋(呼吸に関与する器官)、そして中枢神経系から呼吸筋につながる神経が含まれます。
拘束性肺疾患の患者さんは、呼吸が制限されることが多く、長期の呼吸不全に悩まされている場合があります。呼吸不全につながる拘束性肺障害の主なものには、胸郭形成後の胸郭変形、脊柱側弯症、脊柱後側弯症があります。
拘束性肺疾患の患者さんには、以下のような呼吸不全の症状がみられます。
- 呼吸困難(動作中の息切れ)
- 起座呼吸(寝ている状態での息切れ)
- 末梢性浮腫(脚や足首のむくみ)
- 繰り返し発生する胸部感染
- 起床時の頭痛
- 疲労
- 質の低い睡眠
治療をしないと
拘束性肺疾患は 骨格、呼吸筋、神経といった領域に悪影響を及ぼす病気であり、そのために患者さんの筋肉が衰え、自力で呼吸できなくなるおそれがあります。当然のことながら、日中にしっかりと呼吸ができなくなれば、さまざまな活動を楽しむ気力や体力がなくなります。また、夜間に適切な呼吸ができなければ、身体機能が十分に休息できないので、次の日のための体力が温存できません。
人工呼吸器の使用が適切であると医師などの医療従事者が判断した場合は、機器による治療が開始されます。拘束性肺疾患により引き起こされる呼吸と睡眠の問題を治療すると、患者さんの生活の質が向上する可能性があります。人工呼吸器での補助によって呼吸の質が向上し、健康的な毎日を送れるようになるかもしれません。
治療法
人工呼吸器は患者さんが毎日を快適に過ごし、夜はぐっすり眠って、人生を謳歌することができるようサポートするための治療機器です。 一般に換気療法の目的は、呼吸器系の機能を補助して、患者さんの呼吸をより楽にすることです。換気は侵襲的または非侵襲的な方法で行われます。
こどもの呼吸器系の病気は、気管支炎、肺炎、喘息などが代表的ですが、呼吸器疾患となると非侵襲的換気(NIV)の治療等が必要となります。
以下の点に該当するお子さんは、睡眠呼吸障害(SDB)、呼吸困難、呼吸不全の発生リスクが高い状態です。
- 上気道閉塞(扁桃腺肥大、口蓋挙上、喉頭軟化症、小顎症が原因で発生)6
- 下気道閉塞または制限(気管支拡張症または脊柱側弯症が原因で発生)6
- 筋緊張の低下(筋萎縮症や筋ジストロフィーなどの先天性の病態に伴うことが多い)7
- 橋、延髄(脳)、中枢神経系の機能低下(先天性中枢性低換気症候群や脊髄損傷が原因で発生)6
小児のSDB、呼吸困難、呼吸不全に対する治療法は、手術から非侵襲的換気治療(NIV)や侵襲的換気治療(IV)に至るまで多岐にわたります。
呼吸器疾患の種類
呼吸器疾患には4 つの種類があります: 肥満低換気症候群 (OHS)、神経筋疾患 (NMD)、拘束性肺疾患、および小児呼吸器疾患です。
OHS
肥満低換気症候群(OHS) は肥満の方に見られる呼吸障害です。 低換気症候群は、呼吸が浅すぎる、または遅すぎる状態を意味します。
体が呼吸をするのに必死になるため、呼吸器系が疲弊し、血液中の二酸化炭素濃度が高くなり、酸素濃度が少なくなってしまうのです。動脈血ガス分析により容易に診断することができます。
OHSの患者さんには、息切れ、日中の過度の眠気(EDS)、起床時の頭痛、抑うつの症状が現れることがあります。また閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)に罹患していることもよくあります。
治療をしないと
OHSを治療せずに放置した場合に、次のような結果を生じる可能性があります。
- 心臓の右部分の心不全1
- 肺高血圧症(肺動脈において血圧が通常より高くなる疾患)1
- 多血症(循環赤血球の数が異常に多くなる疾患。真性赤血球増加症とも呼ばれます)1
OHSは重大な健康被害をもたらす可能性があるため、早期診断と治療が必要な病気です。 すでにOSAの治療を受けているにもかかわらず、昼間の眠気や頭痛が持続する場合は、医師に相談してください。
NMD
神経筋疾患(NMD)は、筋肉を制御する神経をおかす幅広い疾患や病態、あるいは筋力低下そのものを指す名称です。神経が筋肉に指示を送れなくなると、筋肉は適切に機能できなくなります。
NMD患者さんの一般的な呼吸不全の症状として下記があげられます。
- 嚥下(えんげ)や呼吸が困難になる
- 疲労、脱力、眠気を感じる
- 起床時に頭痛がする
- 集中力が低下する
- 気分が変動する
- CO2値が高くなる
患者さんによっては、常時以下の症状がみられることもあります。
- 呼吸筋(呼吸に関与する筋肉)が弱くなる
- 補助換気が必要になる
- 車いすが必要になる
拘束性肺疾患
胸壁は呼吸のメカニズムに不可欠な役割を担っています。胸壁には、骨格(肋骨、脊椎、胸骨)と呼吸筋(呼吸に関与する器官)、そして中枢神経系から呼吸筋につながる神経が含まれます。
拘束性肺疾患の患者さんは、呼吸が制限されることが多く、長期の呼吸不全に悩まされている場合があります。呼吸不全につながる拘束性肺障害の主なものには、胸郭形成後の胸郭変形、脊柱側弯症、脊柱後側弯症があります。
拘束性肺疾患の患者さんには、以下のような呼吸不全の症状がみられます。
- 呼吸困難(動作中の息切れ)
- 起座呼吸(寝ている状態での息切れ)
- 末梢性浮腫(脚や足首のむくみ)
- 繰り返し発生する胸部感染
- 起床時の頭痛
- 疲労
- 質の低い睡眠
小児の呼吸器疾患
こどもの呼吸器系の病気は、気管支炎、肺炎、喘息などが代表的ですが、呼吸器疾患となると非侵襲的換気(NIV)の治療等が必要となります。
以下の点に該当するお子さんは、睡眠呼吸障害(SDB)、呼吸困難、呼吸不全の発生リスクが高い状態です。
- 上気道閉塞(扁桃腺肥大、口蓋挙上、喉頭軟化症、小顎症が原因で発生)6
- 下気道閉塞または制限(気管支拡張症または脊柱側弯症が原因で発生)6
- 筋緊張の低下(筋萎縮症や筋ジストロフィーなどの先天性の病態に伴うことが多い)7
- 橋、延髄(脳)、中枢神経系の機能低下(先天性中枢性低換気症候群や脊髄損傷が原因で発生)6
参考資料
Source: Parameswaran, K, Todd, DC, Soth, M . Altered respiratory physiology in obesity. Can Respir J 2006;13(4): 203-210.
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Source: Parameswaran, K, Todd, DC, Soth, M . Altered respiratory physiology in obesity. Can Respir J 2006;13(4): 203-210.
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Source: Storre JH, Seuthe B, Fiechter R, Milioglou S, Dreher M, Sorichter S, Windisch W. Average volume-assured pressure support in obesity hypoventilation: A randomised crossover trial. Chest 2006 Sep; 130(3): 815-21.
-
Source: Olson AL, Zwillich C. The obesity hypoventilation syndrome. Am J Med 2005 Sep; 118(9): 948-56.
-
Source: Nowbar S, Burkart KM, Gonzales R, Fedorowicz A, Gozansky WS, Gaudio JC, Taylor MR, Zwillich CW. Obesity-associated hypoventilation in hospitalised patients: prevalence, effects, and outcome. Am J Med 2004 Jan 1; 116(1): 1-7.
-
Source: Eagle M, Bourke J, Bullock R, et al. Managing Duchenne muscular dystrophy—the additive effect of spinal surgery and home nocturnal ventilation in improving survival. Neuromuscular Disorders 2007;
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Source: Leger P, Bedicam JM, Cornette A et al. Nasal intermittent positive pressure ventilation. Long term follow up in patients with severe chronic respiratory insufficiency.
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Source: Cheifetz IM. Invasive and noninvasive paediatric mechanical ventilation.Respir Care. 2003 Apr;48(4):442-58.
目覚める、最高なジブン。
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